ポーター:ロンドン生まれの濃厚な黒いビール

ポーター:ロンドン生まれの濃厚な黒いビール

ポーターは18世紀ごろにロンドンで開発された黒ビールです。ポーターという名前は、荷物運搬人(Porter)に好まれたことに由来しています。

ポーター

swamphead

色はこの上なく黒く、泡も褐色で強く立ち上るので、コーラと見間違うほどです。この黒さは高温で焦がした麦芽(ブラックモルト)に由来し、カラメルやココアを思わせる非常に濃厚な香りと味わいを持っています。苦みはやや強めですが、ローストされた麦芽の甘みがあるため、それほどきつくは感じられません。

とにかく濃く、飲みごたえがあるビールなので、ゆっくりと味わいましょう。こってりしたソースを使ったステーキやローストビーフと合わせたり、食後に楽しんだりするとなお一層おいしく感じられます。

このビールの持ち味である麦芽の甘みや濃い香りは、冷やしてしまうと感じにくくなるので、13度前後の温度で飲むのがお勧めです。冷蔵庫から出して15分ほど経った頃が飲み頃になります。

ポーターが生まれた時期のロンドンでは、3種類のエールビールをブレンドした「スリースレッド」というビールが登場して人気を博していました。この当時は、ビールは熟成が進んでいない状態で出荷され、パブやレストランが樽に貯蔵して、飲み頃になったと判断された時に出して提供されていました。

しかし、提供するたびにスリースレッドをブレンドするのが面倒だったので、最初からブレンドした時と同じ味になるように作られた物がポーターです。醸造所で熟成を行うので、出荷後にすぐ飲むことができるようになった最初のビールであり、大量生産に適した性質を持つビールでもありました。

項目詳細
原産地ロンドン(イングランド)
発酵の種類上面発酵(エール)
度数5~6.5%
麦、ホップ以外の原料無し
最適温度13度
有名な銘柄(海外)サミュエル・スミス タディポーター(イギリス)
アンカー ポータ(アメリカ合衆国)
ハービストン オールドエンジンオイル(イギリス)
フラーズ ロンドンポーター(イギリス)
など
有名な銘柄(日本)東京ブラック(ヤッホーブルーイング)
黒船ポーター(ベアード・ブルーイング)
スワンレイクビール ポーター(瓢湖屋敷の社ブルワリー)
星空のポーター(ヘリオス)
など

ポーターの味

ポーターの種類

ロブスト・ポーター

ロブスト・ポーター

fullers

一般的には「ポーター」というとこちらを指します。色は真っ黒で、強くローストされた麦芽によるカラメルのような風味が特徴で、非常に濃いビールです。

ブラウン・ポーター

ブラウンポーター

pyramidbrew

その名のとおり、色が暗い褐色から濃いこげ茶色で、黒くないポーターです。ロブスト・ポーターの特徴であるローストされた麦芽の香りや味はなく、麦芽自体の甘みを持ったカラメルやチョコレートに似た香りを強くない程度に持っています。アルコール度数は4.5~6%と、ロブスト・ポーターより低めで、コクや濃さもそれほど強くなく、少しあっさりした味わいです。

バルチック・ポーター

バルチック・ポーター

cannerybrewing

イギリスからフィンランドやスウェーデンなどのバルト海沿岸国に持ち込まれ、その地で生産されるようになったポーターです。イギリスのポーターは上面発酵で作られるエールビールですが、寒い地域で生産されるバルチック・ポーターは下面発酵で作られるラガービールである点が大きく異なります。アルコール度数が7.6~9.3%とかなり高い点が特徴です。

現在ではバルト海地方のほぼすべての国で生産されています。
有名な銘柄には、スウェーデンの「カーネギー・ポーター」、ポーランドの「Zywiec ポーター」などがあります。

次回は、アイルランドに伝わったポーターが独自の進化を遂げることで生み出された黒ビール「スタウト」を紹介します。スタウトの中で最も有名な銘柄「ギネス」の名は、ビール企業としてのみならず、ギネスブックなどで誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。

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