越前の山々と若狭の清らかな水から、越山若水という言葉でも表現される自然が美しい福井県。景色だけでなく、若狭湾を始めとする良質な漁港により年中海の幸が最大限楽しめます。見て良し、食べて良し。食べ歩き好きには素敵な場所です。
福井県のクラフトブルワリーは、こうした観光の魅力を引き立てることに力を注いだ結果として生まれたところが多いようです。クラフトビール企業として設立されたところはほとんどなく、ドライブインや宿泊施設、酒蔵など、福井の観光を支えている企業が、新たな福井の魅力を見出すべくビール造りを始めたところがメインとなっています。
ビールだけを楽しむのではなく、観光しながら地元のクラフトビールを飲んで周るというのも、クラフトビールの楽しみ方の一つといえるでしょう。
越前福井浪漫麦酒「DIOS」
DIOSは清酒酒蔵「越の磯」で醸造されているクラフトビールのブランドです。DIOSはギリシャ神話の酒の神「ディオニソス(Dionysos)」の略とのこと。
越の磯は明治42年に越廼村茱崎にて創業した伝統ある企業で、ビールの醸造は1998年に始めました。主力商品は清酒「越の磯」と「一期一会」、そしてDIOSです。
DIOSの製造には日本酒造りのノウハウを生かすために杜氏が担当し、仕込み水にも清酒と同様に白山山系九頭竜川の伏流水を使用しています。材料は麦芽100%で、無濾過で酵母を残したまま瓶詰めする点もこだわりです。
醸造所開始と共に、工場併設のイタリアンレストラン「ベルパエーゼ」がオープンされましたが、残念ながら現在は閉店しています。
PAMCOビール
PAMCO(パムコ)ビールは、若狭三方五胡の一つ、水月湖に面したところにある宿泊施設「湖上館PAMCO」で醸造されているビールです。パムコは「旅館でも、ホテルでも民宿でもペンションでもない、ノーボーダーな宿」というのがうたい文句の、若狭を観光するのに適した宿として知られています。
ビールを醸造するきっかけは、現在の館主である田辺氏が両親から旅館を受け継いだ際、若狭の名産である梅を使って湖上館ならではのウリを作りたいと考えたことだったそうです。そこから、若さが名水の里であることにより、ビール造りが回答として浮かび上がったことで、PAMCOビールが誕生しました。
フルーツビールを作っているブルワリーは多いのですが、梅ビールを作るために醸造を始めたブルワリーはパムコだけでしょう。
若狭ビール
若狭ビールは若狭湾に面したドライブイン「若狭海遊バザール千鳥苑」内の、醸造所「若狭シーサイドブルワリー」にて作られているクラフトビールです。
千鳥苑は700名もの人が収容できる北陸最大のドライブインで、地元の海産物や土産物を販売する売店、海鮮バイキング、大広間、軽食コーナー、足湯などがあります。
若狭ビールは北陸のクラフトビール第1号で、海鮮に合うビールを求めて社長自らカナダに赴き、製造方法を学んで生み出されました。カナダの技術を生かすべく、製造に使用する機材は北米の物を導入し、原料にはカナダで作られた有機栽培大麦と、ワシントン山脈で栽培されたアロマホップを使用しています。
ちなみに醸造所には、日本全国300社・約2000銘柄のビールの瓶を展示した「日本地ビール資料館in若狭」が併設されています。ビール好きにとっては非常に興味深い施設です。
次回は中部最大の都市を擁する、愛知県のクラフトブルワリーを見ていきます。