ワルプルギスの夜にははちみつのお酒を

ワルプルギスの夜にははちみつのお酒を

4月30日はワルプルギスの夜です。

古代ケルトに由来する春のお祭りで、4月30日の夕方から5月1日の朝にかけて、北欧を中心に行われるものです。この夜は、魔女が悪魔崇拝の集会を行いうろつくと言われていました。古代ケルト人にとって、春と秋の季節のお祭りは重要なもので、現在でもハロウイーンとともに残っているお祭りでもあります。

国によって違うワルプルギスの夜の過ごし方

ワルプルギスの夜は、ドイツや北欧、バルト三国などで、季節の行事として残っています。それぞれの国で祝い方が違い、ドイツでは春の到来を待つお祭りとして知られています。ブロッケン山で魔女が大きなお祭りをして春の到来を祝うといわれ、現在では「復活祭のかがり火」を焚くキリスト教のお祭りにかたちを変えています。フィンランドでは、大晦日と夏至祭に次ぐお祭りで、大規模なカーニバルを行います。エストニアではワルプルギスの夜は魔女の集会と酒宴だと考えられており、夜通し屋外でお酒を飲み、春の到来を祝うパーティーを行います。ヨーロッパでも北部にあたる北欧やバルト三国やドイツは春の訪れが遅く、あっという間に夏になることから、季節の変わり目は大きな行事として大切にされています。

ワルプルギスの夜に触発された作品たち

古代ケルトに由来するワルプルギスの夜は、とても神秘的なものでもあり、古くからさまざまな芸術家が触発され、ワルプルギスの夜にまつわる作品を遺しています。ゲーテが書き遺した悲劇戯曲「ファウスト」にもその様子は記され、それを下敷きにメンデルスゾーンが作曲した「最初のワルプルギスの夜」が生まれたり、現代でも多くの小説や映画が生み出されています。児童文学やアニメーションまで、ワルプルギスの夜をテーマに作られたものは非常に多く、たくさんの人に影響を及ぼしています。

フィンランドでワルプルギスの夜に飲まれるお酒

フィンランドのワルプルギスの夜は、翌日の贅沢なピクニックまでの期間を含めて祝祭とし、これを「ヴァップ」と呼びます。ヴァップの期間中は、お酒をたくさん飲んで過ごしますが、5月1日にその年最初のビールを飲むほかに、はちみつを使って造る「シマ」というお酒をたくさん飲みます。シマは微発泡のミードのようなもので、スーパーマーケットで売っているシマの素を使い、各家庭で造ります。大きなバケツにはちみつとイースト菌や栄養剤が入ったシマの素、水を入れて、数日から1週間ほどで完成します。

バイキングの飲み物「シマ」

もともとシマはバイキングの飲み物として生まれたものでした。バイキングの時代には、お酒は飲む人に、神秘的な力を与えると信じられており、シマは1年を通して飲まれていました。16世紀頃になると、ドイツやラトビアから製品になったものが輸入され、アルコール度数も17%ほどあるミードのようなものが流通するようになります。しかし、原料が贅沢で高価なことから、シマは貴族や上流階級のものとされ、次第に特別な日や、牧師の会合などで飲まれるだけになっていきました。その後原料がはちみつから砂糖に変わることで、庶民が手にしやすくなるものの、禁酒法が始まったことで途絶えることに。しかし禁酒法が終わると同時に、労働者にとってのごちそうのお酒として、メーデーである5月1日に飲まれるようになりました。神秘的な力をバイキングに与えるアルコールを、自宅で醸すシマは、どこか魔女の秘薬作りにも似て、祝祭の期間を盛り上げるのにうってつけだったのかもしれません。

残念ながらその性質上、シマは製品化されたものがなく、輸入されていませんが、ミードを飲むことで気分を味わうことが出来ます。古代ケルトの魔女やバイキングに思いを馳せながら、初夏の心地よい気候の中でミードを味わえば、不思議な力が湧いてくるかもしれません。ミードのほんのりとした甘さが心地よい酔いにいざなってくれますよ。

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