クラフトビールの自由さを体現:青森県のクラフトブルワリー

クラフトビールの自由さを体現:青森県のクラフトブルワリー

青森県のクラフトブルワリー

志を持つ人ならだれでもビール醸造に挑戦できる!

本州最北端の青森にも、クラフトブルワリーの風はこの地にも吹き込み、徐々に大きく成長しつつあります。非常に伝統ある場所での前例がない試みもあれば、青森にクラフトビールを広めるための「伝道師」の如き新規参入もあります。青森のブルワリーは、クラフトビールというものがどれほど自由で、前例にとらわれずに広がっていくことができるのかを実感させてくれる所ばかりです。

梅香山崇徳寺「バイコードリンクB・S」

バイコードリンクB・Sは、お寺にある日本唯一の醸造所です。お寺にあるというのは寺の敷地内にあるということではなく、文字通りお寺が醸造所であるという意味です。
梅香山崇徳寺は下北半島大間町にある浄土宗のお寺で、寛永年間から続く歴史あるお寺です。しかし、現在は檀家が少なくなっており、住職を務める佐々木真萠さんにより、寺を維持していく方法としてビール醸造が開始されました。
仕込みに使う水は建立以前より境内に湧いている恐山山系の水で、地元では「長生きの水」として親しまれているそうです。現在では他の企業からの委託醸造も請け負っており、「恐山ビール」「地吹雪ビール」「ねぶたビール」など、青森らしいビールを製造しています。

仏教において、お坊さんはお酒を飲んではならず、お酒を寺に持ち込むことも禁止されています。これは酒を飲んで自制が利きにくくなり、不殺生や不妄語といった戒律を犯すのを防止するためのものです。しかし、薬として正しく用いるなら問題が無いという考えから、お酒を「般若湯(悟りの知恵の湯)」と呼ぶこともあり、必ずしも排除されるわけではありません。
また、キリスト教においてはトラピスト会系の修道院が、自分たちでビールを作って収入を得る伝統があります。宗教が異なれども、まさに佐々木さんは同じ方法を実践しているといえます。ベルギーやオランダで作られるトラピストビールは特に素晴らしいビールとして有名なので、お寺ビールもいずれ世界に知られるようになるかもしれません。

銘柄味の印象
卍麦雫ラガー
(へレス 5%)
お寺らしい名前を持つビールブランドです。酵母を生かしたまま瓶の中でも発酵・熟成を進行させるボトルコンディションの方法を採用しています。
卍麦雫ピルスナー
(ピルスナー 5%)
チェコ産のザーツホップを使用したボヘミアンスタイルのピルスナー。日本で主流のジャーマンピルスナーに比べると苦みが弱く、ホップの爽やかさが印象に残ります。
卍麦雫ペールエール
(ペールエール 5.5%)
崇徳寺が最初に販売したビールの一つは、上面発酵酵母を使ったエールビールです。このペールエール、スタウト、ビターの三種は、麦芽の使用率が25%であることから、発泡酒として表記されています。
卍麦雫スタウト
(スタウト 5%)
アイルランド生まれの濃口の黒ビール。せっかく濃厚なビールなので、購入してからすぐに飲むのではなく、1か月ほど瓶の中で熟成させて味をまろやかにするのもよさそうです。
卍麦雫ビター
(ビターエール 5%)
イギリスで一般的な、ホップを利かせたエールビール。ビターといってもそれほど苦いわけではなく、後味にホップの苦みが感じ取れるぐらいという意味です。

委託醸造しているビール

銘柄味の印象
恐山ビールシリーズ恐山ビールは工藤商店が崇徳寺に醸造を委託しているビールのブランドです。種類はピルスナーとラガーで、卍麦雫と同じボトルコンディショニングとなっています。工藤商店が通販を行っているので、卍麦雫よりも手に入れやすいブランドです。
恐山ビール工房シリーズ恐山ビール工房シリーズは、ペールエール、スタウト、ビターエールの3種類です。発泡酒の表記がある方が「工房」シリーズとして分けられています。
恐山ビール工房ヤマブドウ
(フルーツビール 5%)
青森産の山ぶどうエキスを使用したフルーツビール。普通のブドウに比べると、山ブドウはリンゴ酸が5.5倍、ビタミンB6が3倍、鉄分が5倍、カルシウムが4倍と、栄養価が高いことが特徴です。
あおもりアップルドラフト
(フルーツビール 5.5%)
青森県を代表する果物のリンゴを、ビールに配合して発酵させたフルーツビール。こちらも酵母が生きたボトルコンディショニングになっているので、買ってから少し時間を置けば、熟成されて味から角が取れるとともに、よりきめ細かい炭酸が楽しめるようになります。
あおもりカシスドラフト
(フルーツビール 5%)
リキュールの原料としてよく使われるカシスは、フルーツビールの材料としても人気です。実は青森はカシスも全国一の生産量を誇っています。
青森ニンニク黒ビール
(ベジタブルビール 5.5%)
青森県は日本のニンニク生産量の80%を占めるニンニク県です。このビールではニンニクを発酵・熟成させた「黒ニンニク」をペーストし、ビールと共に醸造する方法で製造しています。飲めば生のニンニクを放り込んだような強烈な感覚が炸裂し、一発で目が覚めて元気が出ます。ただ、臭いも炸裂するので、飲む時と場合を選ぶことになります。

奥入瀬麦酒

奥入瀬ビール

青森県アンテナショップ「あおもり北彩館」

奥入瀬ビールは十和田市にある「奥入瀬ろまんパーク」内のビールレストラン「奥入瀬麦酒館」にて醸造されているオリジナルビールです。
奥入瀬ろまんパークは十和田湖ふるさと活性化公社によって設立された道の駅で、敷地内には野外ステージや、奥入瀬の渓流を楽しむ親水公園など、広い野外で楽しめるスポットになっています。
食事処は、ステーキレストランの「味蕾館」と、ビールレストランの「奥入瀬麦酒館」です。ビールの醸造は麦酒館が行っており、醸造施設も店内から見ることができます。

ラインナップはスタンダードなピルスナー、ダークラガー、アンバーラガー、ヴァイツェンと、クラフトビール好きにはおなじみのドイツ系ビールです。レストランで飲めるビールということで、やはり料理と一緒に嗜むのが一番です。
毎月の第三木曜日は「麦酒館の日」で、クラフトビール好きにはうれしい2時間の飲み放題コースが1,600円で楽しめます。

シーズン限定品のビールが作られることもあり、第三弾のビールは2016年の10月に開催された「フレッシュホップフェスト」のために作られたもので、チェコ産ホップを使ったボヘミアンスタイルのピルスナーでした。今後も新しいビールが作られ、ラインナップが増えていくかもしれません。

銘柄味の印象
ピルスナー
(ピルスナー 5%)
スタンダードなチェコ発祥のビール。ピルスナーは色が薄い料理との相性が良いので、メニューの「パーナ貝の奥入瀬ビール蒸し」のお供にするのがお勧め。
ダークラガー
(デュンケル 5%)
ローストした麦芽を使った濃色のラガービール。濃い色のビールは、濃い目のソースを使ったハンバーグなどの肉料理とよく合います。
アンバーラガー
(ヴィエナ 5%)
中程度にローストしたウィンナーモルトを使用した琥珀色のラガー。スパゲティボロネーゼなど、食べごたえのあるメニューと一緒にどうぞ。
ヴァイツェン
(ヴァイツェン 5%)
小麦麦芽を使った白ビール。苦みが非常に弱くフルーティーな味と香りが特徴で、ハム、チーズなどの軽食や、スイーツなど軽い味わいの物との相性が良いビールです。

Be Easy Brewing

Be-Easy-Brewing

BE EASY BREWING

Be Easy Brewingは弘前市で2016年11月にオープンしたばかりの新鋭クラフトブルワリーです。創業者のギャレス・バーンズ氏はかつて三沢航空基地に勤務しており、2007年に退役して弘前に移り住みました。弘前に移住後は英会話教室の先生を始め、今では津軽三味線の奏者もしています。
バーンズ氏は以前に東京で飲んだクラフトビールの味に魅了されて、弘前にも広まることを期待していたそうです。しかしなかなか普及していない状況を見て、ついに自分でクラフトビール製造に参加することを決意し、日本とアメリカでの勉強を経てBe Easy Brewingを立ち上げました。

醸造所の2階には、出来立てのビールが飲めるタップルーム「ギャレスのアジト」があります。ここでは自家醸造のビールを含め、日本及び海外のクラフトビールの合計10種類が常備されています。スタッフは全員が何らかの形で醸造に関わっているため、ビールの知識も非常に豊富です。クラフトビールについての勉強会も開催されており、楽しみつつビール一流人に近づくことができます。

まだ出発したてなので、タップルームのビールは他の醸造所のものが多いのですが、これからはどんどん増えていくことでしょう。また、今後は東京、福岡、神戸にも出荷する計画があるとのことで、他の街のパブでBe Easyのビールが飲める日も遠くはなさそうです。
醸造所兼お店の住所は「弘前市松ケ枝5-7-9」。アジトというだけあって、ちょっとひっそりとした隠れ家的な場所にあります。

銘柄味の印象
デビーズ ペールエール
(アメリカンペールエール 5.8%)
ホップを強く利かせたアメリカ風ペールエール。アメリカ産のホップ「センテニアル」、「ウォーリアー」、「モザイク」の三種類を使い、フルーツのような鮮烈な香りを生み出しています。華やかな香りの裏にはIBU(苦み指数)42のはっきりとした苦みを有します。
あずまし ウィートエール
(アメリカンウィートエール 5.1%)
Be Easyのビール第2号は、小麦を使いつつ、ホップの香りを際立たせたアメリカ風の白ビール。苦いのは苦手という方でも抵抗なく飲めるスタイルです。

次回は少し南下し、秋田県のクラフトブルワリーを紹介します。日本有数の米どころであり、一人当たりの日本酒消費量が全国2位の秋田ですが、実はビールのクラフトブルワリーに関しても、日本はおろか世界にも通用する実力派企業が揃った県でもあります。

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