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広島県のクラフトブルワリー

広島は四国・中国地方最大の都市である広島市を擁し、工業・商業・農林漁業がそれぞれ盛んな豊かな県です。それでも、近年の少子高齢化や過疎化のあおりを受けて、他の都道府県と同じように成長に陰りが出ている所も存在します。
広島県のクラフトブルワリーの第一号は、地元の活気を取り戻すべく呉市商工会議所が地元企業と共に立ち上げた「呉ビール」です。もう一つの代表的なブルワリーである宮島ビールも、CEOが地元に再び活力を取り戻させるために生み出されたブルワリーです。

広島でのクラフトブルワリーは現在まで7社誕生し、そのうちの3社が閉店してしまっていますが、生き残ったブルワリーは販路の拡大や直営店の改装などを積極的におこなって成長を続けています。まだ長野のヤッホーブルーイングや茨城の常陸野ネストビールのように世界に羽ばたく段階にまでは至っていませんが、これからの成長次第では十二分に可能性があるはずです。

宮島ビール

宮島ビール

宮島ビールは日本三景で有名な宮島で、2010年に開店したブルワリーです。
創業者兼CEOの有本氏は老舗旅館の20代目だったのですが、家業を受け継ぐことなくサラリーマンの道を選び、一度は宮島を離れました。2009年に退職勧奨を受けて宮島に帰って来たのですが、その際に地元の商店から活気が失われている様子を目の当たりにしたことから、宮島を活性化する新名物を作ろうと考えたことが、宮島ビール誕生のきっかけとなりました。

ビールはドイツのケルンにおける製造方法を取り入れ、香り成分を多く生産するエールビールの酵母を使い、ラガービールのように低温で熟成・発酵させることで、芳醇な香りとすっきりした味わいを両立した形になるように工夫されています。
今までは自家醸造設備は持っておらず、販売しているビールはレシピだけを開発し、醸造は全て外部に醸造委託していました。缶入り製品は新潟の新潟麦酒、ボトル製品は山口の企業、樽生は大阪のニックタナカにそれぞれ醸造を委託しています。

店舗兼直営店の「宮島パティオ」は、フェリーターミナルから10分程度、厳島神社入り口のすぐ手前にあり、元は有本氏の実家である老舗旅館があった場所です。ビールと同じ霊水で淹れたコーヒーや、特製の「宮島バーガー」、ここだけでしか飲めない季節限定のフルーツが味わえます。

2017年11月22日には、表参道商店街に新店舗「宮島ブルワリー」がオープンし、宮島パティオは閉店して、そちらに移行する形となりました。海を臨む好ロケーションである上に醸造所も併設されており、2018年1月から宮島ブルワリーで作られたビールが販売される予定になっています。

海軍さんの麦酒

海軍さんの麦酒

海軍さんの麦酒は呉市にある「呉ビール」が製造するビールのブランドです。呉は戦艦大和などでよく知られているように、明治時代より造船で栄えてきた街ですが、時代の変遷によって人口が減って活気が失われつつありました。
呉に新たな名物を作ってこの状況を打破するべく、呉市商工会議所が中心となって地元企業200社の出資により、1996年に呉ビールが誕生しました。同時に直営レストランの「麦酒館クレール」が開店しています。

当初のブランド名は「クレール」で、フランス語で「明るい」を意味するClairに、呉にエールを送る(呉+エール)をかけたネーミングとなっていました。
1990年代末に第一次ブームが終わって日本のクラフトビールが一旦衰退しかけましたが、テコ入れを行うために1999年にブランド名を現在の「海軍さんの麦酒」に変更し、一過性のブームで終わらせないようにより力を入れたことで、現在に至っています。
2007年には麦酒館クレールが改装され、「地ビールレストラン 海軍さんの麦酒」としてリニューアルオープンしました。

ビールはドイツのスタイルを参考とするため、ドイツから製造設備を輸入するとともに、醸造士はミュンヘンから招へいしたブラウマイスターの指導を1年半にわたって受けました。もちろん、ドイツの「ビール純粋令」に従い、水、麦芽、ホップ、酵母以外の原料を使用しないこだわりぶりです。水は呉の名水「灰が峰の湧き水」を使用しています。ちなみにボトルは栓抜きが不要なタイプで、販売された当初は珍しい工夫であったそうです。

クラフトハートブルワリー

クラフトハートビール

クラフトハートブルワリーは福山市にある酒販店「ハートピア」が醸造するビールのブランドで、2015年に誕生しました。ハートピアが取得している醸造免許は発泡酒のもので、発泡酒醸造免許を取得したブルワリーとしては広島県で初めてとなります。

ハートピアは県内に店舗を5つ有し、以前よりクラフトビールの取り扱いに力を入れてきました。特に川口にある店舗は100種類以上のクラフトビールが取り揃えられ、広島で最もビールの品ぞろえが充実している店舗となっています。
醸造長である小畑氏は、日本で10人と少ししかいないと言われるビール鑑定士の最高資格「マスター・ビアジャッジ」を有している人物です。2014年の三月までは、東京でブルーパブ「PANGAEA」を経営していましたが、故郷である福山市に帰ってきてハートピアに入社し、醸造所の立ち上げに携わってきました。
現在ではハートピアでのビール醸造を行う傍ら、尾道自由大学(実際の大学ではなく、学びたい人が自由に講義を受けられる私塾)において、ビール醸造学の講師を担当しています。

ビールはドイツ産の麦芽やアメリカ産のホップに加え、広島生まれの様々な副原料を加えることで独自色を生み出している点が特徴です。その結果として、作られるビールは他とは一味違う、かなり強い個性を持つようになっています。

醸造所があるのはハートピア本社ではなくベネフィットホテル福山で、1階にある直営レストランの「クラフトハートダイニング」で提供されています。もちろんハートピアの各店舗でも買うことが可能で、通常のボトル製品で販売するのみならず、リサイクル可能な専用ボトルでの量り売りも行っています。

次回は島根県のクラフトブルワリーを見ていきましょう。

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