“天使の分け前”~熟成年数100年のウィスキーが無い理由とは?~【後編】

“天使の分け前”~熟成年数100年のウィスキーが無い理由とは?~【後編】

天使はどのくらい酒を飲む?50年で樽の中は空っぽになる!

単なる自然現象を「天使の分け前」と名づける酒職人のセンスはナイスですが、実際天使はどの位の量を飲むかと言えば、“年間で酒樽に詰められた酒の2%くらい”になります。

まぁ、保管環境によって結構な誤差は生まれますが、計算上は50年で樽詰めされたウィスキーは空っぽになってしまうわけです。ウィスキーを詰める樽の容量は、180リットル詰めから最大では480リットル詰めまで色々ありますが、どの樽も天使の分け前は2%程度だと言われています。180リットル級の樽だとウィスキー100本分くらいですから、これを50年で飲み干すとしたら、天使は年に2本くらいボトルを空けている計算になります。

天使の分け前後編01

出典元:Christopher Jensen

ウィスキーのラベルに書かれた熟成年数とは?

ウィスキーは普通、ブランドの味を完全に覚えているブレンダーが、複数の原酒の樽をブレンドしてボトルに詰めています。まともな熟成処理をしているウィスキーは、「ザ・グレンリベット10年」とか「ザ・マッカラン12年」というように、大抵商品名やボトルに熟成年数が明記してあるわけです。

この熟成年数は“このボトルにブレンドされている、最も若い樽の熟成年数”になります。
つまり“○○10年”とラベルに書かれたウィスキーのボトルには、最低でも10年熟成された原酒で造られていますよという意味で、ボトルの中身には10年以上熟成された原酒がブレンドされているわけです。

天使の分け前後編02

出典元:macguys

熟成年数100年のウィスキーがないわけ

筆者が知っている“最もオールドなウィスキー”の熟成年数は「50年モノ」になります。ただし50年モノのウィスキーは大抵は限定販売の商品です。フラっと酒屋に行って、手ごろな値段で買えるウィスキーの熟成年は、6~12年程度のモノでしょう。

15年とか25年といったウィスキーも高額にはなりますが、普通に酒屋の棚に並んでいます。しかし30年を越えるようなオールドなウィスキーは滅多にお目にかかりません。その理由はこれまで紹介してきたように、長期熟成すると樽の中身がどんどん減ってしまうからです。

ちゃんとボトリングして、酒屋に卸して棚に並べるためには、ある程度以上の原酒量が必要ですので、50年モノなんてウィスキーは限定品としてしか商品化できません。そして熟成年数は50年が限界であり、どんなにがんばっても樽熟成で100年なんてウィスキーは、全ての樽が空っぽになってしまい、商品化出来ないのです。

=完=

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