クレープの日には生まれ故郷のりんごのお酒を

クレープの日には生まれ故郷のりんごのお酒を

「クレープをもっと身近なおやつに」という願いから生まれた「クレープの日」は、毎月9のつく日(9日、19日、29日)。洋菓子メーカーの「モンテール」が日本記念日協会に登録した記念日です。

クレープというと、東京・原宿の竹下通りにある、薄くてやわらかな生地に、生クリームがたっぷり使われたものを思い出す人も多いのではないでしょうか。

フルーツやチョコレートにアイスと、カラフルなトッピングも目を引く、食べ歩きスイーツの代表格とも言えるかもしれません。しかしながら、クレープの元祖は、食事としての料理なのです。それはフランス北西部のブルターニュ地方で生まれました。ブルターニュのクレープのはじまりは、蕎麦粉で作る「ガレット」と呼ばれるものでした。

もともと、土地が痩せていて、冷涼な気候の土地であったブルターニュ地方は、小麦の栽培が難しいことで知られていました。その土地を飢饉から救ったのが蕎麦でした。中世の十字軍によってもたらされた蕎麦は成長が早く、3ヶ月程度で収穫のできる穀物で、痩せた土地でも育ち、冷涼な気候に適していました。その点に目をつけ、ルイ13世の妻だったアンヌ王妃が、蕎麦栽培を無税で奨励したため、蕎麦の栽培が広がり、幾度もの飢饉を救ってきたのです。

蕎麦が常食とされ始めた頃は、蕎麦粥や蕎麦がきとして広まりましたが、蕎麦粥が偶然焼けた石の上に落ちてパンのようになり、それが美味しかったことから、焼いたものが広まっていきました。フランス語で小石を意味する「ガレ」にちなんで「ガレット」と名付けられ、現代の「蕎麦粉のクレープ=ガレット」の原型となっています。

現在「ガレット」は、蕎麦粉に水と塩を混ぜ、薄く焼いたもので、ハムや魚介、チーズや玉子などを包んだ料理のことを指し、食事用の塩味のクレープとして親しまれています。ガレットが生まれてからしばらくして、小麦粉で作るスイーツの「クレープ」が誕生します。ブルターニュ地方ではカフェよりもクレープリー(クレープ料理店)のほうが多く、ガレットやクレープで食事をしながら、地元の発泡酒である「シードル」を茶碗で楽しむのが、日常の風景となっています。

「シードル」はりんごを使った発泡酒のことをいいます。ブルターニュ地方の農家の畑には、必ずといっていいほどりんごの木が植えられており、それを搾ってシードルを醸すそうです。日本でいえば、どぶろくのような存在かもしれません。シードルは、郷土の生活に根付いたお酒で、かつては水の代わりに飲まれたものでもあります。

もちろん、植えられているりんごはシードル専用の品種。40種類以上あるりんごから生まれるシードルは、甘口から辛口まで、スッキリしたものからコクのあるタイプまでさまざまです。アルコール度数は5%程度と、ワインよりも度数が低く、飲み心地が良いのが特徴です。

ブルターニュ地方では、工業的な製品だけでなく、今でも昔ながらの技術が継承され、農家が集まってシードル生産者組合を作り、製品を造っています。濃縮還元果汁や砂糖などを一切使わない、天然果汁100%を使用し、伝統の技を用いたシードルは、りんごの風味がしっかりとした味わい。ガレットやクレープとともに味わえば、ブルターニュのクレープリーへと心は飛んでいけそうです。

クレープの日には蕎麦粉を使ったガレットや、フルーツたっぷりのクレープを用意して、シードルを飲むのも楽しいのではないでしょうか。きっと普段と違う気分が楽しめますよ。

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