三ツ星レストランもうならせる:茨城県のクラフトブルワリー

  • 2017.03.24
三ツ星レストランもうならせる:茨城県のクラフトブルワリー

茨城県のクラフトブルワリー

茨城県は日立グループを始めとする大企業の工場を有し、さらに製造業の研究拠点も多く存在する工業・研究が盛んな県です。何より学園都市のつくばがあるということで、東京とは別の意味で最先端を行く県といえるでしょう。

そんな茨木は実は農業面でも発達しており、大和政権時代には「大国」「常世の国」と呼ばれたほどの、北海道に次ぐ日本最大の農業地帯です。各種野菜やメロンのような農作物以外にも、日本酒、梅酒、ワインの生産も充実しています。
そして何より、茨城はビール生産量が日本一の県です。これはアサヒやキリンといった大企業が製造工場を置いていることが主な理由なのですが、だからと言ってクラフトブルワリーが弱いということは全くありません。
茨城のクラフトブルワリーには、高い実力を有した世界に誇れる強者が揃っています。

常陸野ネストビール

常陸野ネストビール

常陸野ネストビールは那珂市鴻巣で文政6年(1823年)から続く酒蔵「木内酒造」のビールブランドです。1996年に製造免許を取得して以来成長を続け、現在では長野のヤッホーブルーイングや、岩手の銀河高原ビール、埼玉のCOEDOと並び、日本を代表する有力クラフトブルワリーのひとつとなっています。

木内酒造の主力製品は清酒「菊森」シリーズですが、米焼酎、梅酒、梅や柚子、リンゴのワインなど、非常に手広い商品展開を行っています。それだけ様々なお酒を造るノウハウが蓄積されているということで、常陸野ネストビールも相当な数のラインナップがそろえられています。

常陸野ネストエールでは特定の国のジャンルにこだわらない、木内酒造ならではのビールが作られています。しかも、単純に外国のスタイルを模倣するのではなく、そこに日本独自のアレンジを加えたオリジナルビールを作り出している所がミソです。現在は50か国に輸出され、アメリカでもクラフトビールのファンなら知らない人はおらず、しかも三ツ星レストランに置かれるようにまでなっています。
最初は那珂の酒蔵で醸造されていましたが、世界からの需要が増えたため、2008年度からは額田に新設された醸造所・工場で醸造・出荷が行われるようになりました。工場を新しく作れてしまうほどに世界からの需要がある所が、常陸野ネストビールが極めて高い実力を持っていることの証明といえます。

銘柄味の印象
ホワイトエール
(ベルジャンホワイト 5.5%)
ネストビールの代表銘柄である、ベルギー生まれの白ビールです。麦芽にしていない小麦、コリアンダーシード、オレンジピールに加え、ネストビールオリジナルの工夫としてナツメグとオレンジジュースも使われています。
常陸野ネストラガー
(ラガー 5.5%)
日本で一般的なラガースタイルの製品で、4種類のホップによる爽快な香りと、低温発酵による切れの良いのど越しが特徴のビールです。新しいバリエーションに手を出しづらいという人にも安心の、定番且つ上質な味を持ちます。
アンバーエール
(アンバーエール 6%)
通常の麦芽に加え、銅色のミュンヘンモルト、カカオ風味を持つチョコレートモルト、黒いブラックモルトと、熱の入れ方を変えた3種類のロースト麦芽を使った濃色ビール。濃い味付けをした料理との相性が良いビールです。
ペールエール
(ペールエール 5.5%)
イギリスのバートン・アポン・トレントという町で生まれて広まったエールビールです。イギリス産の麦芽とホップを使い、イギリス式の醸造法で作られた本格派で、ラガーよりも色・味・香り・苦みの全てが濃いところが特徴です。
ヴァイツェン
(ヘフェヴァイツェン 5.5%)
小麦麦芽を50%以上使用した、ドイツ産の白ビールです。淡いオレンジの色合いに、南国の果物を思わせる甘い香り、優しく滑らかな口当たりを持ちます。本場であるドイツの農林省から2年連続で金メダルを授与された本格仕様。
スウィートスタウト
(ミルクスタウト 4%)
真っ黒な色をしたアイルランド生まれの黒ビールです。イギリスではスタウトを飲む際に砂糖を加えて飲むことがあり、その味を製造段階から持たせるために乳糖を加えて作ってあります。香ばしさの中にも甘みがあり、少し軽めの味になっています。
レッドライスエール
(吟醸ビール 7%)
原料の一部に古代米である赤米を使い、大吟醸用の清酒酵母で発酵させた日本独自のビールです。淡い薄紅の色合いと、大吟醸酵母が生み出す果実のような吟醸香が特徴です。主に輸出向けとされていますが、国内でも販売されています。
エキストラハイ
(バーレイワイン 8%)
イギリス生まれの高アルコールビールで、通常よりも多量の麦芽とホップを使用して仕込みを行い、半年から1年もの熟成期間を経て作られる特製品です。味は深くて濃く、苦みも強いのですが、それらを意識させないまろやかさがあり、飲みやすい口当たりの良さを有します。
ジャパニーズクラシックエール
(IPA 7%)
日本のビール黎明期に使われていたと思われる製造法を再現して作られた、オリジナルスタイルのビールです。清酒と同じように杉樽を使って仕込み、多くのホップを投入することで、杉の香りと鮮烈な苦みを持たせています。
リアルジンジャーエール
(スパイスビール 8%)
ノンアルコールではない、本当の「ショウガビール」として作られたスパイスビールです。高知県産のショウガを使用し、刺激的な香りと味を付け加えています。度数も8%と高めで、非常にパンチの利いたビールです。
だいだいエール
(フルーツIPA 6.2%)
城県石岡市八郷で作られるミニサイズのミカン「福来ミカン」と、オレンジの香りがするフランス産ホップ「ブルゴーニュ」を使用して作ったフルーツビール。二次発酵中にホップを追加で漬け込むドライホップ製法により、香りを最大限に引き出しています。
エスプレッソスタウト
(コーヒースタウト 7%)
スタウトに深入りのコーヒー豆を加えて作った、まさにエスプレッソなビール。スウィートスタウトとは対照的な苦みがほとばしる、濃厚な黒の中の黒です。
セゾン ドゥ ジャポン
(吟醸ビール 5%)
セゾンはベルギーの農家が夏に飲むために、冬の間に仕込んで作るビールです。そんなベルギーのビールを、木内酒造独自の日本酒酵母で作り、香りのアクセントとして少しだけ柚子を加えた、まさに「日本のセゾン」といえるビール。
ニッポニア
(オリジナルビール 8%)
日本で開発された二条麦の原種「金子ゴールデン」と、日本で育種されていたホップ「ソラチエース」を使用して作った、完全日本産のオリジナルビールです。美しい黄金色の輝き、柑橘系の香り、度数8%の強さが、他のビールとは全く異なる独自の性格を作り出しています。
賀正エール
(ベルジャン・ストロング・ホワイト 8%)
アメリカへの輸出用として作られている冬季限定ビールです。イギリス産の麦芽を大量に用いて抽出した濃厚な麦汁に、4種類のホップとコリアンダーやシナモン、オレンジピール、バニラ、ナツメグなどのスパイス・ハーブを加えて作られます。長期熟成が可能なビンテージビールで、「賀正」の名にふさわしいプレミアムな製品です。
ノン・エール
(低アルコール飲料 0.3%)
度数0.3%の低アルコールビールで、あまりお酒が強くない人にも安心して飲めるドリンクです。深い銅色と十分な麦芽のうまみ、アロマホップの香りは、単なるビールの代用品ではないことを知らしめてくれます。

牛込シャトービール

牛込シャトービール

牛込シャトービールは牛込市中央にあるワイナリー「シャトーカミヤ」で作られているクラフトビールです。シャトーカミヤは1903年に実業家の神谷傳兵衛によって開設された日本初の本格的なワイナリーで、2008年には発酵室と貯蔵庫、事務室の建物が国の重要文化財に指定されました。
現在はオエノングループ傘下の合同酒精「牛込ワイナリー」が事業を取り仕切り、園内は一般公開され、レストラン2つとバーベキューガーデン、ショップ、および博物館が設置されています。

傳兵衛がボルドーワインを始めとする様々な洋酒の醸造事業を行って来ましたが、ビールだけは志半ばで終わってしまいました。その遺志を引き継ぐ形で設立されたのが牛込シャトービールです。
ラインナップはヘレス、デュンケル、ピルスナーの3種類で、期間限定品を合わせて年間約20種類のビールを製造しています。歴史あるワイナリーの技術はビール造りにおいてもいかんなく発揮され、日本で開催される国際ビール大賞では10年連続の受賞を果たしたばかりでなく、2016年度のインターナショナル・ビア・コンペティション(世界で最も権威あるビール品評会)で、「へレス」が金賞を受賞する偉業を成し遂げています。

銘柄味の印象
ヘレス
(ヘレス 5%)
ヘレスは南ドイツを中心として製造されているラガービールで、ドイツ語で「明るい」という意味です。その名のとおり黄金色で、ピルスナーによく似ていますが、ピルスナーに比べるとホップの香りと苦みは抑え気味で、麦芽の旨味が強調されている点が異なります。
デュンケル
(デュンケル 5%)
こちらはヘレスと対照的に「暗い」を意味する名前のビールです。ローストした麦芽を使用することで、カラメルやコーヒーを連想させる味と香りが持たされています。ヘレスやピルスナーと比べると味が濃い料理や肉料理との相性が良いビールです。
ピルスナー
(ピルスナー 5%)
日本人にも友なじみがある金色のビール。ドイツ産ホップが利かされた、切れの良い香りと苦みが印象的です。
牛込ホワイト
(アメリカンウィート 5%)
牛込産の小麦を使用したオリジナルの白ビールです。小麦のビール特有の滑らかな口当たりとかすかな酸味に、アメリカ産ホップが持つ柑橘系の香りが組み合わさったフルーティな味わいをしています。
クリスマスボック
(ドッペルボック 7%)
ボックはドイツ生まれの高アルコールのラガービールでです。ドッペルとは「ダブル」の意味で、濃さ・アルコールの強さが共にダブルであることを表しています。冬に体を温めるために飲む「ウィンターウォーマー」にふさわしいビールです。
ブロンシュ
(ウィート 5%)
こちらはシャトーカミヤオリジナルの酵母を使用して作られた白ビールです。オリジナル酵母はベルギービールのようなフルーツ系の香りを持ち、アメリカ産ホップの香りと共に甘い芳しさを作っています。
クランベリーラガー
(フルーツビール 3%)
日本ではちょっと珍しいクランベリーのフルーツビール。鮮やかなピンク色に、はちみつのような甘い香り、クランベリーの甘酸っぱい味が特徴の、カクテルのようなビールです。度数も低いので、軽くお酒を楽しみたいときに向いています。
IPA
(IPA 8%)
かつてイギリスからインドの植民地へと輸出するときに、劣化しないように高いアルコール度数にして大量のホップを加えて作られたエールビールです。強烈な苦みとパッションフルーツやマンゴーを思わせる華やかな香りが同居した通好みの逸品です。

Paradise Beer Factory(パラダイス・ビア・ファクトリー)

Paradise-Beer-Factory

パラダイス・ビア・ファクトリーは、農園「鹿島パラダイス」が運営するビール醸造所です。2016年に酒造免許を取得した出来立てほやほやのブルワリーで、開設に伴って醸造所がある店名を「樂田屋」から変更しました。
醸造所はレストランが併設されており、鹿島パラダイスで作られた農作物を使ったイタリアンを、樽生のビールと共に楽しめます。
鹿島パラダイスではより良い味の作物を作るために完全自然農法を実践しており、ビールに使う麦や材料は、農薬はもちろんのこと、肥料すら使用せずに、独自の工夫によって作られています。農法としてみると効率は良くありませんが、最良の味を作るためには欠かせない工夫です。

ビールの仕込みには鹿島神宮から湧出する水が使われています。この水は日本の湧き水としては珍しく、ミネラル分を豊富に含む硬水で、エールビールを仕込むのに適した性質を持っています。日本で主流のドイツ系ビールは軟水で作られることが多いため、硬水でビールを作っているブルワリーはなかなか珍しい存在です。
商品展開を積極的に行っているため、開設から日が浅いにもかかわらず通販でビールセットが購入できるようになっています。

銘柄味の印象
8/SHRINE
(ベルジャンホワイト)
パラダイス・ビア・ファクトリーの代表銘柄で、自家製の麦芽とハーブによって作られています。名前は醸造の師である八蛮氏と、鹿島神宮(Kashima Shrine)に由来します。
FEHLER
(ホワイトラガー)
小麦を使って、下面発酵の酵母で醸造した「白いラガー」。上面発酵のホワイト「エール」は良くありますが、ラガー系はなかなか珍しい製品です。Fehlerとはドイツ語で「エラー」のことです。
DAKHLA
(ダークウィート)
焙煎した麦芽を使った小麦のビールで、いわゆる「黒い白ビール」ともいえる製品です。カラメルのような風味と、白ビール特有の甘さが合わさった濃厚な味を持ちます。Dakhla(ダクラ)とは、西サハラにあるモロッコの都市です。
MELILLA
(ペールエール)
イギリスのバートン・アポン・トレントで生まれたエールビールです。ペールエールの醸造には十分な硫黄分が欠かせず、鹿島神宮の水はこのビールを醸造するのに最適な性質を有しています。Melilla(メリリャ)はモロッコの地中海沿岸にあるスペインの飛地領のことです。
GOA
(IPA)
その昔、インドの植民地に在留するイギリス人のために本国から輸送したスタイルのビールです。Goa(ゴア)はインド西海岸中部にある州で、インドでも裕福な土地の一つです。
5 daughters
(ホワイトエール)
原料に日本酒の酒粕を使った、一風変わった独自のビールで「White Ale with Sake Lee」の分類名が付けられています。どんな味かは飲んでからのお楽しみです。

次回は埼玉県のクラフトブルワリーを見ていきましょう。ここにも世界に誇れる有名ブルワリーが拠点を置いています。

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