様々なビアグラスの特徴と、よく合うビアスタイルの組み合わせ:コップ型グラス編

様々なビアグラスの特徴と、よく合うビアスタイルの組み合わせ:コップ型グラス編

様々なビアグラスの特徴と、よく合うビアスタイルの組み合わせ:コップ型グラス編

ビールに様々な種類があるように、それをたしなむためのビアグラスも多種多様なものが存在します。普通のコップ型からワイングラスと同じ足つき型、シャンパン用やブランデー用の物と同じ形、100mlサイズのものから1リットルサイズまで、まさに千差万別です。パッと見では似たような雰囲気のグラスでも、それぞれの形の一つ一つにビールの魅力を引き出すための秘密が隠されており、実際に使ってみるとその違いがよくわかります。
それぞれのグラスの特徴と、どんな種類のビールを飲むのに使うのが良いかを見ていきましょう。

まずは私たちになじみが深い、コップ型の種類を紹介していきます。

ピルスナーグラス

ピルスナーグラス

ピルスナーは世界で作られているビールの多数を占める、金色で爽快なラガービールの代表格です。ピルスナー用のグラスは、ビールの性質を表すかのようなすらりと背の高いタイプのグラスです。底から先に向かって広がった、逆円錐の形状が主流となっています。

背が高いことによって、傾けたときに流れ込むビールの勢いが強くなり、爽快な味わいを作ります。また、泡がきれいに立つところも特徴です。口が広めになっているのは、泡の形をきれいにするとともに、傾けたときに流れる勢いを強める意味があります。

欠点として、口が広がっている分だけ炭酸が逃げるスピードが早いので、早めに飲み干せない量だと気が抜けてしまうことになります。泡がつぶれる前に飲んでしまえるように、自分に合ったサイズのものを選びましょう。

適するスタイル
ピルスナー、アメリカン・ライトラガー、デュンケル、シュバルツ、へレス

ヴァイツェングラス

ヴァイツェングラス

ヴァイツェンはドイツの白ビールで、ヴァイスビアとも呼ばれます。小麦を50%以上使ったものも多く、うっすらと濁った淡い色と、クローブやバナナを思わせる甘い香りを持ちます。
このビールのために作られたヴァイツェングラスは、女性の腰を思わせる優美な曲線が持ち味です。口の部分が少しだけ広くなっており、この部分が豊かなフワフワの泡を作って保持するとともに、香りをグラスの中に閉じ込める役目を果たします。

ドイツのヴァイツェングラスは500mlのビールを「泡も含めて」入る量に作られていますが、他の国では200~300mlのものが一般的です。ピルスナーを飲む場合にも適しており、ピルスナーグラスよりも少しゆっくり目に、香りを楽しながら飲みたい場合にぴったりです。

適するスタイル
ヴァイツェン各種(ヘフェ、クリスタル、デュンケル、シュバルツ)、ピルスナー、ベルジャン・ホワイト

タンブラー

タンブラー

タンブラーはいわゆる「コップ」のことです。ビアタンブラーはその名の通りビール用のタンブラーで、ガラス製以外にも金属製の物が多く作られています。円筒形である以外は特に決まった形があるわけではなく、容量も500mlの物から240mlの物まで様々です。最近では、断熱効果を高めるために、二重構造を採用しているものも増えています。

通常のサイズのものは冷やしてさっと飲むタイプのビールにおすすめで、日本のビールにはうってつけです。オン・ザ・ロックに使うロックグラスも熱が通りにくく、ビールの量が少なくなっても鼻との距離が遠くならないので、香りを長時間楽しめます。

主にベルジャン・ホワイトのような、冷やして飲む香り高いビールに適した形状です。ベルギーのビアグラスは足つき型が一般的ですが、ベルジャン・ホワイトの代表ブランドのヒューガルデン・ホワイトが出している専用グラスは、分厚いタンブラーグラスとなっています。

適するスタイル
ピルスナー、ヴァイツェン、ペールエール、ベルジャン・ホワイト、IPA

パイントグラス

パイントグラス

イギリスでの「ビールグラス」といえば、このパイントグラスのことを指します。その名のごとく、一杯にすると1パイント(イギリスでは20オンス=568ml)入るようになっており、高さが15cmほどもある大ぶりのサイズです。

イギリスのビールは常温でゆっくりと少しずつ飲むビールなので、パイントグラスは泡立ちを保つことを重視していません。それどころか底に突起を設けて泡の発生を促し、炭酸ガスを早く逃がしてしまうように工夫されているものがあり、むしろ泡が収まるのが早い方が良いとみられています。

主な種類には、普通の形状をした「コニカル(円錐)」と、上に近い部分にふくらみが付いた「ノニック」があります。ノニックのふくらみには、グラスを重ねたときにはまり込んで抜けなくならないようにするストッパー、欠けにくいようにする補強構造、持つときの滑り止めの役目があります。一説には、このふくらみによって飲むときにビールに対流が起こり、香りが出やすくなるのだとか。

最近では、香りを閉じ込めやすいように口の部分が少しすぼまった「チューリップ」と呼ばれるものも出ています。1パイントでは多すぎる場合のために、半分のハーフ・パイントや、1/4のクオーター・パイントのグラスも使われています。

適するスタイル
ペールエール、IPA、、スタウト、ポーター、ビターエール、マイルドエール、ブラウンエール、オールドエール、スコティッシュエール、セゾン、ベジタブルビール

ジャグ(ディンプル・マグ)

ジャグ

持ち手が突いたジョッキ型のパイントグラスです。手榴弾のような表面の刻みは、洗い物をするときの滑り止め、及び補強のために施されています。持ち手が付いているので、1パイント分のビールが入ったグラスが重たいお年寄りにも扱いやすいデザインです。

シェイカーグラス(アメリカンパイントグラス)

シェイカーグラス

パイントグラスのアメリカ版ともいえるグラスです。ただし、アメリカのビールはイギリスのようにゆっくりと少しずつ飲むわけではなく、冷えた状態で爽快さを味わうスタイルなので、量は少なめになっています。アメリカでの液体1パイントは16オンス=473mlで、イギリスよりも少ないのですが、それでも多いということで14オンスのものが一般的です。

何とも普通な形状ですが、温度を低く保ち、広がった口から香りを放出できるという、ビール用としてなかなか優れたグラスです。アメリカ生まれの、ホップが利いて飲み心地が爽快なビールに適しています。

適するスタイル
ピルスナー、アメリカン・ペールエール、アメリカン・クリームエール、アメリカン・ライトラガー

シュタンゲ

シュタンゲ

ドイツのケルン伝統のビール、ケルシュを飲むためのグラスです。シュタンゲとはドイツ語で「棒」の意味で、背が高いまっすぐな形状をしています。

ケルンの飲み屋ではウェイターがクランツ(花輪)と呼ばれる手提げ型のお盆に乗せて店を巡回しており、グラスが空になればすぐに新しいものと交換してくれます。常に新しいビールが楽しめるように、サイズは100~200mlと比較的小ぶりで、一気にグイッと飲んでしまえる量です。

お隣のライバル都市であるデュッセルドルフでも、伝統ビールのアルトを飲む際にも同じものが使われています。アルト用のものは、ケルシュ用よりも少し短く太い形状です。
冷やして入れてから短時間で飲むと良いビールによく合い、少しの量だけ楽しみたいときに便利です。

適するスタイル
ケルシュ、アルト、ピルスナー、シュバルツ、グーズ

ウィリーベッヒャー

ウィリーベッヒャー

ドイツで一般的なコップ型のグラスです。ベッヒャーとはビーカーのことで、ウィリーはこのグラスを開発したグラス会社の社長ウィリー・シュタインマイヤーにちなみます。
特徴は胴体の真ん中にあるカーブで、口がすぼまることによって香りを閉じ込めつつ、泡を立たせて保持する効果を持ちます。また、持ちやすさを向上させるのにも一役買っています。

ドイツビールなら何でもよく合う、汎用性の高いデザインのグラスです。パイントグラスよりも小さめで、泡の持ちはそちらよりも良くなるように作られており、日本のビール向けの形状といえるでしょう。

適するスタイル
ピルスナー、ヘレス、デュンケル、シュバルツ、メルツェン、ボック

コップ型のグラスでは、背が高く細長いものがドイツ風で、幅広でどっしりした大ぶりのものがイギリス風という形になっています。ドイツ風のビアグラスは泡をきれいに立たせて保持できるように細い胴を持ち、冷やしてのど越しよく飲めるようにすらりと背が高い形です。
イギリスのパイントグラスは、時間をかけて少しずつ飲むイギリスの飲み方に合わせた形状です。温度や泡の保持は特に考慮されていないので、常温でも泡が抜けても味が落ちないどころかおいしくなるビールのためのグラスといえるでしょう。

近代的なシェイカーグラスやウィリーベッヒャー、タンブラーなどは、両者の中間のような形と大きさで、サイズを変えればどんなビールにも対応できる汎用性の高さが特徴です。ビールの種類によっても適した形状は異なりますが、さらに飲むときのシチュエーションや気分にも合わせて選ぶことができれば、ビールがもっと楽しくなるでしょう。

次回は、コップ型に並んでメジャーな足つき型グラスと、日本でも人気のビアマグの種類を紹介していきます。

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