ビールにはどのような種類があるのか?

ビールにはどのような種類があるのか?

様々なビール

今回はビールにはどのような種類があるのかを見て行きます。同じように麦芽とホップだけを原料としても、作り方や酵母の種類により、全く違う飲み物に思えるほどに味や香りが変化します。

たくさんの種類を覚えるのは大変なので、ひとまず大まかな分類による違いを見て行きましょう。

ビールの分類

まず、世界中にはどれだけの種類のビールがあるのかを見てみましょう。

アメリカ最大のビール祭りである、グレート・アメリカン・ビアフェスティバルにおけるビール審査会では、世界のビールを65のカテゴリーに分類して審査しています。また、日本地ビール協会の「ビアスタイルガイドライン」では、ビールの種類を106のカテゴリーで分類しています。この中には日本酒の酵母を使ったビールや、いわゆる「第3のビール」など、日本向けの種類も含まれています。
ビールの種類は「タイプ」ではなく「スタイル」と呼ばれるので、ビールの種類について語る際は注意が必要です。

非常に多くの種類があるビールですが、性質の特徴により、大雑把にいくつかのカテゴリーで分類することが出来ます。
そのうち、大きい分け方が発酵の仕方によるもので、「上面発酵ビール(エール)」「下面発酵ビール(ラガー)」「自然発酵ビール」の三つに分類されます。特殊な例外を除き、大半のビールはこれら三つのうちのどれかに入っています。

種類特徴
上面発酵ビール
(エールビール)
15~25℃で早く発酵。酵母が浮かぶ。
複雑で濃い味と香り。
ぬるめがおいしい。
イギリス、ベルギーに多い。
下面発酵ビール
(ラガービール)
5~15℃で発酵。酵母が沈む。
淡麗で切れのある味と香り。
冷やすとおいしい。
ドイツ、チェコ、日本、アジアに多い。
自然発酵ビール空気中から混入する酵母で発酵。
乳酸菌による酸味を持つ。
ベルギーのごく一部だけで製造。
ハイブリッドビールエールとラガー、あるいは他の酒との複合。
酵母の種類や発酵方法をミックスする、
違う酒の酵母を使うなどの方法で作る。

上面発酵ビール(エール)

上面発酵ビール(エール)はイギリスやベルギーなどで一般的な種類のビールです。名前に「エール」が付いているものは、この分類のビールであることを示しています。
この種類のビールを作る酵母は、15~25度の比較的高い温度で活動する種類で、発酵が進むと水面の方に浮かんでくるようになります。これが上面発酵の名の由来です。

上面発酵では発酵や熟成のスピードが早く、その間に様々な副産物が生成されます。こうして出来上がったビールは、アルコール度数がやや高く、副産物によって複雑な味と香りを持つようになります。また、エールビールを作る水には、一般的にはミネラル分が多い硬水が使われます。

冷やすと香りが立ちにくいので、ぬるめの温度で飲む方がおいしく感じられるビールが多い点が特徴です。

下面発酵ビール(ラガー)

下面発酵(ラガー)ビールはドイツのバイエルン地方発祥のビールです。日本で一般的な種類である「ピルスナー」は、この種類に分類されます。
ラガーを作る酵母は、上面発酵の物よりも低い5~15度の温度で活動する種類で、発酵が進むと底の方に沈んでいくようになります。これが下面発酵の名の由来です。

下面発酵では発酵や熟成がゆっくりで、0度の温度で1~2か月熟成することで完成します。こうして出来上がったラガービールは切れが良く淡麗な味と香りになります。エールとは違って、冷やすとおいしく感じられる点が特徴です。

ラガービールの歴史はエールに比べると比較的浅く、作られるようになったのは15世紀に入ってからです。このビールの発祥の地であるバイエルンの水はミネラル分が少ない軟水で、上面発酵する酵母が活動しにくく、ビールが作りにくい環境でした。しかし、バイエルンの職人たちは、軟水でも元気に活動する種類の酵母を見つけ、この酵母を使ってビールを作るようになりました。この酵母は低温環境下で発酵を進めるため、職人は秋の終わりに仕込みを行い、冬の間に洞窟で貯蔵して熟成させるという変わった方法を取りました。

ラガーとはドイツ語で「貯蔵する」という意味で、洞窟で貯蔵して熟成させたことに由来します。
エールに比べて新参者のラガーでしたが、近代の大規模な設備があればエールよりも大量生産が容易なため、現代ではビールの主力となっています。

自然発酵ビール

自然発酵ビールは最も原始的な方法で作られるビールです。他のビールで使われる酵母は、人間が選択して培養した物ですが、自然発酵では空気中に漂っている自然の酵母でビールを作ります。

その製造法は、他のビールと同じように作った麦汁を、タンクのふたを開けたまま放置し、空気中に漂っている酵母やバクテリアを取り込んで発酵させるという物。紀元前の古代ビールに通じる作り方です。
酵母だけでなく乳酸菌も入って発酵を行うので、ワインにも似た酸味を持っている点が特徴です。
現在、この種類のビールで流通しているものは、ベルギーで作られる「ランビック」だけとなっています。

ハイブリッドビール

この種類のビールは、エールとラガーの両方の特徴を同時に持たせたり、ビール用ではない酵母を使ったりして、複数の特徴が複合させたビールです。
エールを製造するときの高い温度でラガーの酵母に発酵を行わせたり、ラガーの酵母とエールの酵母を同時に使ったりして、エールの深い味とラガーの切れの良さを両立させる工夫が施されています。また、日本酒の酵母を使って作るビールもこれに含まれており、日本酒のそれに似た落ち着いた味わいが特徴です。

次回からは、多数の種類があるビールのスタイルを一つずつ見て行きます。100以上のスタイルを全部知るのは大変なので、知っておくと役立つメジャーなスタイルを中心に紹介していきます。

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