修道士が広めたビール作り。ビールはどのように作られているのか?

修道士が広めたビール作り。ビールはどのように作られているのか?

今回は、どのようにビールが作られるのかを説明していきます。

はるか昔は発芽した麦を水につけておくことでビールを作りましたが、さすがに現代ではそうはいきません。ヨーロッパにビールを広めたのは当時の知識人であるキリスト教の修道士たちであったことから、ビールを上手に作るのは簡単な作業ではなかったことが分かります。現代でもビール造りは緻密な計算に基づいた、高い技術力が必要とされる作業なのです。

ビールの製造工程

製麦

ビールを作るには、まず麦芽が必要です。
麦芽を作るためには、大麦を選別してきれいにしてから、水に40~60時間浸します。
それから発芽床という場所に広げ、4~7日待つと芽と根が出て、でんぷんを糖に変える酵素が生じてきます。このままでは麦になってしまうので、高温で乾燥させる「焙燥」により、麦の成長を止めます。

この工程によって青臭さもなくなり、麦芽が出来上がります。

このときの、焙燥をする温度や時間によってビールの色と味が変化してきます。低温で乾かすとビールは薄い色と淡麗な味わいになり、高温で色が付くまでしっかり焙燥すると、ビールは黒く濃い味わいとなります。

破砕

麦芽が完成すると、今度はこれを挽いて細かくしていきます。ただし、粉々にしてしまうのではなく、粗挽きにとどめられます。粗挽きにすれば、後に麦汁を濾すときに、麦の殻が自然のフィルターとなるからです。

糖化

お酒のアルコールは酵母菌という微生物の活動によって、生産されます。酵母がアルコールを作る原料は、麦芽に含まれているでんぷんです。しかし、でんぷんのままでは、酵母はアルコールに変えてやることは出来ません。酵母がアルコールに変えてやれるのは、でんぷんを一段階分解して作る「糖」です。まずは、でんぷんを糖に変えてやることで、酵母がアルコールを生産出来る土台を整えてやる必要があります。この工程が糖化(マッシング)です。

麦芽を粗挽きにした後は、お湯に入れて「おかゆ」を作ります。このおかゆを60~72度の温度に保ってやると、麦芽の酵素がでんぷんを糖に変化させ、麦芽のもろみが出来上がります。このときに出来る糖の量が、ビールのアルコールの度数やボディの強さを左右する要素です。

濾過

糖化が進んだらでんぷんが十分に糖に変わっているかどうかを検査します。糖の量が不十分ではビールにならないので、検査をして必要な量の糖が出来上がっているかどうかを確かめます。このときにどれだけ「濃い(糖の量が多い)」麦汁が作られるかどうかが、ビールの性質を大きく変えます。麦汁が普通の水に比べてどれだけ重いか(どれだけ糖を含んでいるか)という指標は「初期比重」と呼ばれ、出来上がるビールのアルコール度数を予測する指標になります。
検査をして糖化が十分になったと判断されると、もろみを濾過して澄んだ麦汁にします。このときに最初に出てくる麦汁が「一番麦汁」で、最も糖の量が多くなります。
その後、上からお湯のシャワーをかけ、残った成分を抽出します。これが「二番麦汁」です。一番麦汁の方が豪華に思えますが、一番麦汁は糖が非常に多いために、これでビールを作るとアルコール度数が高くなりすぎます。そのため、一番麦汁では抽出できなかった成分を持つ二番麦汁と組み合わせ、度数や味の調節を行うことが重要です。

煮沸

濾過してクリアな麦汁ができると、今度はそれを沸騰させてホップを投入します。沸騰させることで殺菌するとともに、ホップの成分を抽出します。このとき、ホップは2~3回に分けて投入されます。ホップの香りは煮ると飛んでしまうので、最初に入れるホップは苦み付けのため、香りづけのホップは最後の方に投入します。
このときにホップを入れるタイミング、ホップの種類を変えることにより、ビールの香りや味の変化が作り出されます。

発酵

香りづけが終わると、次は酵母菌(イースト)を入れて麦汁を発酵させます。
酵母の種類にもよりますが、発酵に適した温度は24~40℃です。ただ、煮えた麦汁が冷却するまでのんびり待っていると他の菌が入り込んで繁殖しだすので、冷却器を使って外気に触れさせないようにして一気に温度を下げます。
麦汁に入れられた酵母は、麦芽の酵素を使って自分の細胞壁を変化させ、糖分を吸収できるようにします。準備が整うと酵母は増殖し、糖を食べてアルコールと二酸化炭素を生産していきます。これで、麦汁はビールとなるのです。散々食事をした酵母は、底に沈んで「澱」になります。

発酵が終わったばかりのものは「若ビール」と呼ばれる状態で、まだ味に深みがありません。そこで、しばらく貯蔵タンクの中で寝かして熟成させる必要があります。ワインやウィスキーと同じですね。

まずは溜まった澱を濾過して取り除きますが、ビールの中には残った酵母が浮いています。この酵母によって貯蔵タンクの中でも発酵がゆっくり進み、作られた二酸化炭素はビールの中に溶けこんでいきます。こうして、おいしいビールが完成します。

完成したビールはパッケージングされ、市場へと出荷されて我々の手に届きます。

次回は、こうした製法が確立するまでに、ビールがどのような歴史をたどってきたのかを紹介します。

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