「龍神丸」ブームのきっかけとなった「もやしもん」

「龍神丸」ブームのきっかけとなった「もやしもん」

今回紹介するのは、講談社「イブニング」などで連載されていた「もやしもん」(石川雅之)です。

もやしもん

フジテレビのノイタミナ枠でアニメ化や実写ドラマ化されたので、そちらを見た人も多いでしょう。菌を見ることのできる不思議な能力を持った沢木惣右衛門直保(さわきそうえもんただやす(←本名です))の大学生活などを描いた漫画です。

大学に入学した沢木君ですが、密造酒造りに巻き込まれるわ、食中毒騒動になるわ、野菜泥棒をさせられるわで大騒ぎが続きます。コミックス2巻でようやく落ち着くと、友達と一緒に酒屋に買い出しに向かいます。

そんな13話「日本酒はお嫌いですか?」では、日本酒が抱える問題の一端が語られます。難しい話はコミックスを読んでもらうとして、酒屋の主人が「和歌山のとある蔵のお酒なんだが呑んでみるかい?」と一升瓶を差し出します。

フキダシの漢字が「飲んで」じゃなくて「呑んで」なのに注目したいところ。他の人には「君らも利いてみるかい」と勧めています。「利き酒」なる言葉もありますが、「利いて」と勧める人は、そういないでしょう。

主人曰く「この酒蔵は農大OBの蔵元杜氏が一人で造っているんだ。和歌山の世界遺産に選ばれた土地の名水を用いて醸された大吟醸生原酒だよ」と。そのお酒が「龍神丸」です。

龍神丸

龍神丸を造っているのは、和歌山県にある高垣酒造。創業は天保11年(1840年)の老舗で、小規模な蔵元ながらも現在に至る……と書きたいところなのですが、2010年に杜氏も務めていた高垣淳一社長が亡くなり、一時製造が中断してしまいました。

現在は奥様である高垣任世さんと前社長の高垣嘉宏氏が中心となり、製造を再開されているようです。ただし元々製造量が少なかったこともあり、通信販売などは中止しており、ホームページも通信販売中止のお知らせ文のみが掲載されています。

酒屋の主人に勧められた女の子は、あまり日本酒に良い印象を持っていなかったのですが、「龍神丸」を呑むと「おいしい……これが本当に日本酒?」「香りだけじゃなくって味も果物みたい」と感想を述べています。「あたし日本酒ってホントに飲めないのに……」と口にしたくらいなので、よほどのカルチャーショックだったみたいです。

そんな「龍神丸」ですが、先の事情により幻のお酒になってしまいました(再開の可能性もあるかもしれませんが※1)。とは言え、高垣酒造では新たに「里の花」「流霞」などを製造・販売していますので、興味のある方は、そちらを呑んでみてはいかがでしょうか。

※1少量ですが現在、酒屋さん経由で購入できるようです。酒やの鍵本

日本酒や酒店の問題が語られかけたところで、海外から帰ってきた大学の先輩が登場して、またも大騒ぎになります。それはそれで楽しいので、ぜひコミックスをご覧ください。

騒動の最中、沢木君は酒屋の主人から「菌どもを愛してやりな その力が失われてからでは何も出来ねェからな」と言われて、何か感じるものがあった様子。その後も沢木君といろんな菌達が、日本酒にビールにワインにと活躍の場を広げていくのですが、それらはまた改めて紹介したいと思います。

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もやしもん

作者:石川雅之
出版社:講談社
全13巻

参考:高垣酒造ホームページ

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